英 名: Basil
和 名: メボウキ
学 名:
Ocimum basilicum
科 名: シソ科
使用部位: 葉
産 地: モロッコ・エジプト
香りと味: スパイス特有の凝縮された香りと甘み
主要成分: β-カロテン、カリウム、リナロール(香り成分)
ハーブの王様の歴史と起源
バジル(
Ocimum basilicum)は、その芳醇な香りと多様な用途から「ハーブの王様」として世界中で愛されていますが、その起源は紀元前に遡ります。
1. アジア起源と古代文明への伝播
バジルの原産地は、主にインドや熱帯アジアの地域とされています。この地で古くから栽培されていたバジルは、紀元前300年頃、アレキサンダー大王の東方遠征や古代の交易ルートを通じて西方へ伝播しました。特に古代エジプトでは、その防腐作用と香りの良さから、ミイラ作りの儀式や薬草として利用されていた痕跡が発見されています。
2. ヨーロッパでの多様な意味
バジルがヨーロッパにもたらされた際、その利用法や象徴する意味は国や文化によって大きく異なりました。バジルの学名の「
Ocimum basilicum」は、古代ギリシャ語で「王」を意味する「Basileus」に由来するとされています。これは、バジルが王室の香油や薬、あるいは非常に高貴な植物として扱われていたためと考えられています。
古代インドでは神聖なハーブとして崇拝され、特にホーリーバジルは神への捧げ物とされました。一方、中世ヨーロッパでは、その強い香りが魔除けの力を持つと信じられ、教会の祭壇や窓辺に置かれることもありました。
3. 日本への渡来
バジルは江戸時代以降に日本に伝わりました。当初は主に観賞用や薬草として栽培され、その種を水に浸してゼリー状にし、目に入った異物を取り除くのに使われたことから、「メボウキ(目箒)」という和名がつけられました。
古代から神聖な植物、薬草、そして香料として重宝されてきたバジルは、ルネサンス期を経て、特にイタリアを中心とする地中海沿岸で料理に不可欠なハーブとしての地位を確立しました。この歴史的な背景が、現代におけるイタリア料理やフランス料理に欠かせない、芳醇で風味豊かな「ハーブの王様」としてのバジルの地位を形作っています。
バジルは生(フレッシュ)と乾燥(ドライ)で適した使い方が大きく異なります。この違いをご理解頂くことがバジルを美味しく使いこなすポイントです。乾燥バジルは香りが凝縮され、熱に強いという特性があることから、煮込み料理や下味に、また揚げ物や卵料理に適しています。
1. トマト煮込み・パスタソース類
バジルはトマトと非常に相性が良いため、乾燥バジルはトマトベースのソースや煮込み料理、パスタソースに最適です。
(^^♪ 煮込み料理に使う際は、煮込み始めか途中の段階で加えることで、ハーブの香りがゆっくりと溶け出し、料理全体に風味が行き渡ります。
2. 肉・魚料理の下味や調理
肉や魚にバジルの風味を加えたい時、加熱に強い乾燥バジルが便利です。おススメは、マリネ・ハーブ焼き(魚や鶏肉にオリーブオイル・乾燥バジル・ニンニクを揉みこんでグリルやフライパンで焼きます)・フライなどの揚げ物(鶏のから揚げやフライドチキンの衣に、パン粉や小麦粉と一緒に混ぜ込むと、揚げる際も香りが飛びにくく、風味豊かに仕上がります)
3. その他:オムレツなどの卵料理やスープにもおススメです。
※ 注意・禁忌 ※
適切な分量であれば一般的に安全なハーブですが、健康的に摂取するための注意点もあります。
☆ 妊婦・授乳中の方:料理の風味付けに使う程度であれば問題ありませんが、バジルには、子宮を刺激する作用を持つ成分(エストラゴールなど)が微量に含まれるため、過剰摂取は控えるべきと考えられています。
☆ 血液を固まりにくくする薬(ワルファリンなど)を服用されている方:バジルにはビタミンKが多く含まれています(ビタミンKは血液の凝固に関わる成分)血液を固まりにくくする抗血栓薬(ワルファリンなど)を服用している場合、バジルの過剰摂取により、薬の効果を弱める可能性がありますので、バジルの摂取については事前に主治医や薬剤師にご確認ください。
☆ 乾燥バジルにとって湿気は大敵です。湿気により風味が損なわれる原因となりますので、開封後は、袋のチャックをきちんと閉め、高温多湿、直射日光を避け、冷暗所で保存ください。